シフトアップのその先へ

最高の相棒と、どんな道も、どこまでも

クリア~大阪卒業旅行 その③

パーク内に足を踏み入れた途端、ダッシュで園内に向かう人達が多数いましたが、私達は端っこに寄ってタロウの整理券申請手続きが済むのをじっと待ちました。

「あ、ニンテンドーワールドの整理券取れた」

「え、取れたの!? ホントに?」

スマホを操作するタロウに、嬉々として問い掛けます。

「うん、やっぱり朝イチだったからね」

余裕だったよ、とタロウは事も無げに言うや、

「ただ、指定された入場時間までまだちょっとあるから。どこか他に行きたいアトラクションとかある?」

と全員の顔を見回して聞いてきます。

私も姉夫婦も、子供達の喜ぶ顔が見れればそれで充分だと思っていたので特に希望はありません。甥や姪は、アトラクションの知識そのものがない為か、キョトンとしていました。

全員の反応を見て状況を察知したらしきタロウは、

「えっと、じゃあ…」

スマホで園内マップを確認し、

ジョーズ、とかどうだろう? これも人気アトラクションだし。今ならすぐ乗れるみたいだけど」

「おぉ、いいねぇ。ジョーズ!」

以前乗った事がある私は即座に賛成します。姉一家もじゃあそれにしよう、と言いました。

 

 

ジョーズの待ち列は短く、建物内の行列用通路をぐるぐると進んで行きました。

「ねぇ、これってどういう乗り物なの?」

歩きながらのMちゃんからの質問に、「船に乗るんだよ~」と私が答えます。

「船、揺れるかなぁ?」

乗り物酔いしやすい姪はその心配をしていましたが、実際は水の上をレーンで進んで行くだけなので、船酔いはまずしないだろうと微笑んでいました。ですが、ここでその種明かしをするのは興醒めなので黙っている事にします。

「これって、絶叫系? 落ちたり飛んだりする?」

Sくんの不安げな質問に、

「いや、それもないよ」

とタロウが答えます。

「船旅を楽しむ乗り物だから。大丈夫」

と、ネタバレしないよう慎重に従兄妹達に説明していました。

 

 

私達が乗車を促されたのは最前列でした。

「わぁ~。最前列は私達も初めてじゃない?」

「そうだね」

私の言葉に、タロウも楽しげに応えます。

 

やがて。順調かと思われた航行にトラブルが発生し、巨大鮫の攻撃に劣勢となるや、隣のSくんが本気で身を硬くしたのが分かりました。

「大丈夫だよ~」

と手を握ると、反対側に座る姉も自分の息子の手を握っていました。

とある場面で水飛沫がかかり、皆でキャーと、悲鳴とも歓声ともつかない声を上げ、アトラクションは終了します。

 

「いやぁ~楽しかったね!」

「すごい、迫力あった」

と楽しそうな子供達の声を聞いて、なんだか嬉しくなります。

せっかくなので、ジョーズのモニュメントで写真撮影をしました。

 

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「よし、じゃあそろそろ入場出来るよ」

タロウの案内で、ニンテンドーワールドへと向かいます。

「わぁ、いよいよ行けるんだね」

なんだか私まで気分が昂って来ました。

 

 

入り口で整理券の確認をされ、そこを通過するとスーパーニンテンドーワールドの入り口が見えて来ました。

 

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トンネルを抜けると、そこは完全にかのゲームの世界が広がっています。

「わぁ~すごいすごい!」

子供達よりも誰よりも、私が一番はしゃいでいたかもしれません。

数年も前から、タロウが来たいと言っていたニンテンドーワールド。無理かもしれないと諦めかけてもいました。今日この瞬間、そこに入れたというだけで、なんだか感涙にむせびそうにまでなってしまいます。

「ねぇねぇ! 子供達3人そこ並んで~」

そう言って、ゲーム世界を背景に写真を撮ります。

 

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『パワーアップバンド』の売店を指差し、

「これ、買っておいた方がいいよ」

とタロウが言います。

「へぇ~。これって何?」

と姉が聞きました。

「エリア内の色んなゲームが出来たり、はてなブロックを叩くとコインをゲットする音が出たりするアイテム。逆にこれがないと、このエリアはあんま楽しめないかも」

タロウの言葉に購入を決意しますが、お値段は一つ4,400円。

「…こ、子供達の分だけでいいか」

「そ、そうだね。そうしよう」

姉と言い合いそのバンドを購入します。

 

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子供達は嬉しそうに、そこらにあるはてなブロックを下から叩いてコインゲットの音を立てていました。

「じゃあ、アトラクションはどれに乗ろうか?」

とタロウが聞きます。ですが、一番人気の『クッパの挑戦状』は既に100分待ちになっていました。

そこで、待ち時間が比較的少ない『ヨッシーアドベンチャー』に乗ることにしました。

 

 

ヨッシーに乗車するや動き始めます。

「わぁ~すごい! ホントにゲームの中の世界だよ。ねぇ、あのキャラは何ていうの?」

隣のタロウに指差しながら聞くと、その都度キャラクターの名前と特性を丁寧に説明してくれました。

「すごいね~。ゲームの世界がリアルに再現されてる」

ゲームはからきしダメな私でも、マリオは知っています。そんな私ですらこんなにも興奮するのです。ゲーム好きなタロウはもっと喜んでいるのかもしれません。

 

 

アトラクションを降りると、エリア内のあちこちにあるミニゲームに参加しました。

 

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バンドを装着している人限定で参加出来るそのゲームは、クリアする度にキーポイントがゲット出来るというシステムでした。

タロウとSくん、Mちゃんの3人は、協力し合ってゲームをクリアしていきました。

やがてキーポイントが3つ溜まると入場可能なアトラクションに入っていきます。

そこはポイントを溜めたバンド所有者しか入れない所だったので、大人達は外で待機する事になりました。

 

「タロウくんがいてくれて良かったよ」

姉の言葉に、「それはこちらのセリフだよ」と返します。SくんやMちゃんの存在がなければ、エリア内のミニゲームに一人で参加する事も恥ずかしくて出来なかったでしょうし、そもそもUSJに来る事もなかったでしょう。

今を楽しく過ごせているのは明らかに姉一家のお陰なのです。

「いや、だってウチの子達って水と油だから」

二人で何かさせると必ず喧嘩しちゃうのよね、と笑います。

「だから今、タロウくんがウチの子達を面倒見てくれててホントに助かってるよ」

そう言ってもらえてなんだか嬉しくなりました。

 

 

ゲームをクリアした子供達が戻ると、甥も姪も疲れ顔になっていました。 

皆でキノコ模様の椅子に腰掛け休んでいると、

「ちょっと俺、飲み物か何か買ってくるよ」

タロウの言葉に腰をあげかけると、

「いいよ、俺が買って来るから。皆疲れてるでしょ。座って休んでて」

と言い残しショップの列に並んで行きました。

それを聞いた姉とMちゃんも、自分で選びたいからと一緒に並びに行きます。

 

 

『皆疲れてるでしょ、休んでて』、か。

もうそんな事が言えるようになったんだなぁ。

息子の優しさと頼もしさを、ここで改めて実感したのでした。