シフトアップのその先へ

最高の相棒と、どんな道も、どこまでも

2023-01-01から1年間の記事一覧

湘南アートツーリング

あ、江ノ電だ。 ミラーを確認すると、後方から江ノ電こと江ノ島電鉄の車両が近付いて来ているのが分かりました。 国道467号線。 そこは街中を走る江ノ電と一般車両とが一緒に走る道路なのです。 どうしよう、と一瞬考えます。 これまでにも江ノ電と並走した…

時の煌めき

「静か」 「…だね」 森閑とした店屋通りの階段道で、私とヨシさんは歩きながらそう言い合いました。 そこは江ノ島内の小路。 元来なら立ち並ぶ店屋と観光客とで賑やかな通りなのですが、着いた時刻が早朝だった為、まだ辺りはひっそりとしていました。 私達…

江ノ島デートツーリング~後編

狭い階段道の道端には、店屋が立ち並んでいます。 「お団子美味しいですよ~。食べて行きませんか」 「お飲み物だけでもどうですか~?」 各店の店員さんから呼びかけられますが、私達は曖昧な笑みを浮かべてそこを通り過ぎていきます。 階段の踊り場からは…

江ノ島デートツーリング~前編

11月下旬。 朝晩が冷え込むようになりました。 目覚める時刻になっても、それまで身体をぬくぬくとあたためてくれていたお布団から抜け出すのには、中々の気合いを要する季節となります。 でも、今朝は違いました。 目覚ましアラームが鳴る前からスッキリと…

バイク聖地での洗礼~後編

次なる目的地は、栃木県那須塩原市にあるライダーズカフェ『BOBBY』さん。 広い敷地の駐車場と開放的な店内の空間、そしてボリュームのあるフードメニューが高評価のお店です。 ですが、ライダーズカフェと名乗るように、多くのライダー達が集まるのには、店…

バイク聖地での洗礼~前編

それは今から3年前。 2020年11月18日。 私がバイクに乗り始めてちょうど一年が経とうという頃の事でした。 私とヨシさんは、高速道路を走らせ栃木へと向かいます。 「道は順調だね~」 「そうだねぇ。渋滞もしてないし良かった」 セローの走行速度に合わせ、…

光いづこに

実家から、父と母が会いに来てくれました。 11月。四回目の調停に、今度は両親が付き添ってくれることになったのです。 調停の前日、タロウも交えて父と母、4人で食卓を囲みます。 「山形に帰って来ないか」 父が、ポツリと言ってきました。 タロウが高校を…

闇中の迷路~後編

三回目の調停は、なんとその3ヶ月後、9月に執り行われることになりました。 遅々として進まぬ離婚話に、気ばかりが焦ってしまいます。 朝起きて目が覚めると、真っ先に「あぁ、私はまだあの人の妻なんだ」と思い絶望するようにまでなりました。 『次の調停、…

闇中の迷路~前編

父と母、兄と姉、そして私の5人の家族は、グループLINEで繋がっています。 それぞれ離れた場所で生活していますが、庭の花が綺麗に咲いたよ、と母が画像を送ってくれたり、姪や甥が何年生になり、これこれができるようになった、と姉からほっこりした報告が…

迫り来る闇~後編

離婚調停というものは、夫と妻、それぞれが時間を分けて調停員に話を聞いてもらう形なので、実際に夫婦が言葉を交わす必要はないのだそうです。 弁護士さんからそれを聞いた時には、私は心底ホッとしたものです。 もう、あの人の訳の分からない言い分を直接…

迫り来る闇~前編

『タロウと共に家を出てからは、幸せに幸せに毎日を過ごしていきました』 と、ここで書く事が出来ればどんなに良かったかと思います。 ですが、現実はそう甘くはありませんでした。 タロウとの生活の為にも、まずは仕事を頑張ろうと張り切りました。 私を雇…

初心者と新車の、刻まれし軌跡

世の中には大型のバイクショップや量販店が多数点在していますが、私がセローを購入したのは街の小さな小さなバイク屋さんでした。 そのバイク屋さんは徒歩で行けるほどの近所にあり、二輪免許取得前の教習所時代から何度も通わせていただいていました。 バ…

御荷鉾山ツーリング~後編

ダート走行では、自分の吐く息でヘルメットのシールドが曇ってしまいました。 砂埃が舞う中、シールドを少しだけ開けて走行します。 やがてダートを抜け、舗装路に出たのでホッとひと息吐きました。 急勾配を上がり、御荷鉾山展望台に到着します。 バイクを…

御荷鉾山ツーリング~前編

「まさかあそこで渋滞に巻き込まれるとは」 『だねぇ。でも、集合時間にはなんとか間に合いそうだよ』 「そうだね~良かった」 10月下旬の土曜日、セローを走らせながら私とヨシさんはそんな会話を交わしました。 集合時間は8時です。 その40分も前に着くよ…

小さな鍾乳洞の探検

『ちうさん、セローはもうどのくらい乗ってない?』 「え?…っと。7月のオイル交換の時以来だから、かれこれ2ヶ月くらい…かな?」 ヨシさんからの質問に、考えながら答えました。 それは9月下旬の事でした。 今年の7、8月は異様な暑さに見舞われた為、私は必…

私がバイクに出逢うまで~最終章

息子、タロウという人間が、中学から高校に至るまでにどういう成長を遂げ、どのように感じ、どのような心境で過ごしてきたのか。 同じ家の中で暮らし、自身の『宝』と認識しながらも私は、ほとんど斟酌して来ませんでした。 だからこの日。 夫が出かけた休日…

私がバイクに出逢うまで~その4

ゲームで、無敵モードという状態があります。ゲームキャラクターが、特定のアイテムを手に入れることで短時間、無敵になれるモードのことです。 この時の私が、まさにそんな状態でした。 セローを手に入れた私は、まさに水を得た魚。 気力体力が無限に湧き出…

私がバイクに出逢うまで~その3

構築は、大変な労力と信頼関係を要するものですが、崩壊はあっという間なのかもしれません。 どこからが、そしていつからが崩壊の始まりだったのか、それは今でも分かりません。 でも思い返せば、その予兆はそこかしこにあり、そして気付いた頃にはあっけな…

私がバイクに出逢うまで~その2

家族会議は幾度となく開かれました。 借金は残り350万円。 消費者金融会社は4社にもなります。利息分も考えると、もっと払わなければなりません。 まず最初に議題に上がったのが、債務整理でした。 借金を一本化し月々の返済額を減らしていけば返済も楽にな…

私がバイクに出逢うまで~その1

『いつも通りの日常』 心掛けなければいけないのは、ただその一点だけでした。 2022年1月12日水曜日。 それはいつもと同じ、平日の朝でした。 私はいつもと同じように朝5時に起き、三人分のお弁当を詰め、朝食を作り、家族を起こして掃除をします。 息子、タ…

美しき渓谷~寸又峡ツーリング完結編

『あとちょっとで着くからね~』 『うん』 国道362号線の峠道を走りながら私達は、そんな会話を交わしました。 途中、車一台分しか通れないくらいの道幅があり、双方向譲り合いながらの箇所もありましたが、目的地が近付くにつれ次第に道幅は広くなりました…

国道は酷道~寸又峡ツーリング②

昼食を終えバイクの元に戻った私達は、走り始める準備をします。 「ここからは山道だからね~」 「あ、そうなんだ? なら気温が低いかな?」 「そうかもしれない」 渋滞による暑さからジャケットを脱いでいた私は、積載からそれを取り出し、上に着ます。 走…

舌鼓を打ち~寸又峡ツーリング①

5月最終週の週末、朝靄の抜けきらぬ時間帯に目覚めた私は、起き上がりせっせと出発の準備を始めました。 薄手のシャツを二枚、その上にパーカーを一枚重ね、更にジャケットも一枚羽織りました。下も重ね穿きをします。 日中は25℃まで上がりますが、朝晩は冷…

持ち寄りパーティー~箱根林道ツーリング 後編

「こじかさーん、さっきは大丈夫だった?」 休憩のためバイクを停めてすぐ、降車したKさんが聞いてきてくれました。 「バイク、どこも歪んでない? どこか打たなかった」 「はい、大丈夫みたいです。ありがとうございます」 Kさんには全く非のない事にも関わ…

近くて遠い~箱根林道ツーリング 前編

『ヤバい、集合時間に間に合わなそう』 前方を走るヨシさんがインカム越しにそう言ってきたので、私は『マジか…』と呟きました。 それはGW初日の朝。 私とヨシさんは箱根を目指して走っていました。 集合時間は午前10時とゆっくりめ。しかも箱根は僅か数10km…