シフトアップのその先へ

最高の相棒と、どんな道も、どこまでも

故郷と桜並木

「ここいらの、桜の名所って何処かなぁ?」

それは山形に引っ越して来て約10日後、4月上旬のこと。父と母にそう訪ねると二人は少し考え、

「松ケ岡かなぁ」

「やっぱり、馬渡だよ」

と回答しました。

マツガオカ?

マワタリ…?

地名で答えられても私にはさっぱり分かりません。

 

生まれ育った故郷とはいえ、私はこの地を自身の運転で車道を走ったことは一度もないのです。しかもこの20年弱で新しい道が出来たり合併しりした市町村もあり、地理も変わってしまっています。

 

 

よく聞くと、松ケ岡とは松ケ岡開墾場を指すとの事でした。

そして馬渡は完全なる地名で、広い範囲を示しており、そこのどこが桜の名所なのかは地図からは分かりませんでした。

父が、詳しい経路を口頭で教えてくれます。

Googleマップで行き方を調べ、ルートを設定しました。

 

「情報ありがとう!じゃあ明日バイクで行ってみるね」

私がそう言うと、母はくれぐれも事故に遭わないようにと言ってきました。

「うん、安全運転で行って来る」

 

 

翌朝。

「さて」

ヘルメットを被りセローのカバーを外してエンジンを始動させると、実家のガレージから走り出します。

 

 

まず一つ目の目的地は、『松ケ岡開墾場』です。

そこは明治維新後、庄内藩士たちが拓いた緑豊かな大地となっています。国指定史跡としての認定を受けているのです。

その敷地内にはたくさんの桜の木が植えられているそうで、毎年桜のシーズンには桜祭りが開催されているとの事でした。

 

誘導員から誘導され、駐輪場にセローを停めて歩き始めます。

 

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桜は満開でした。

ちらほらと出店もありましたが、まだ時間帯が早いためか空いていました。

 

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茅葺き屋根の建築物もあり、情緒が感じられます。

 

 

ひとしきり見て回った後、セローに戻って次なる目的地を目指しました。

 

「馬渡馬渡。えっと経路は…と」

私は父が教えてくれた馬渡の桜並木をナビに設定するや、走り出します。

両隣には田んぼが広がり、道は長閑な片側一車線です。

 

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その道を、セローが春の爽やかな風を受けて走り抜けました。

「おぉ~すごいすごい」

遠くからでも、その桜並木はピンク色の広がりを見せ規模の大きさが伝わって来ました。

 

あぜ道を抜け、ついにその道へと突入します。

 

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何処までも続く桜並木でした。

ここは桜の名所ではあるものの、道も狭く出店やシートを広げる広場もない為か、ゆっくり花見をしながら走り抜ける車ばかりでした。

道が狭くて対向車とすれ違うのが怖いと母は言っていましたが、バイクならば安心して入って行けます。

 

他の車両と同じように私も、満開の桜を堪能しながらゆっくりと走りました。

 

馬渡川やすらぎ公園でセローを駐輪します。

 

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手前には枝垂れ桜が、その奥にはソメイヨシノが広がっていました。

なんて綺麗な所なんだろうと、はぁとため息が溢れ出ました。

 

セローに跨り、次は市街地を目指します。

市内にある城址公園も桜の名所なのです。そこは私も、子供の頃何度も連れて行ってもらった記憶がありました。

 

バイクを停めて公園内に足を踏み入れると、屋台がたくさん出ていて多くの人々で賑わっていました。

そして、連なる桜たちが華やかに花を開かせていたのです。

この桜の木は、私が子供の頃からあったものなのだろうか?

そうなのだとしたら、樹齢何十年になるのだろう?と考えながら散策します。

 

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公園内の池を囲うように枝が伸びていました。

賑わう園内を歩き回り、セローの元に戻って帰路につきます。

 

綺麗だったなぁ。

素直にそう思えました。

 

思えば、去年は体調を崩して退職したばかりでしたし、一昨年は家庭内のゴタゴタにより、精神はお花見どころではありませんでした。

故郷に帰ることに不安を抱いてはいたものの、今年はこうして季節の花を愛でようと思えるようになれたのです。

その事にどこかホッとしている自分がいました。

 

 

まだまだある、と思いました。

行きたい所、好きな道、素晴らしい絶景スポットや季節ごとの名所。

私の、故郷での新たなるバイクライフが今、始まろうとしています。

これからも楽しく伸びやかに、ツーリングを楽しんでいきたいと思いました。