シフトアップのその先へ

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魔法の国~大阪卒業旅行 その④

私とAさん、そしてSくんがベンチに腰掛け休んでいると、グループLINEに、

『この行列、30分以上かかりそう。そうなると11時を過ぎるから飲食店に入るのはもう厳しいかも』

とタロウからメッセージが流れて来ました。

タロウの事前の下調べで、USJの混雑時はどの飲食店も11時を過ぎてしまうと3時間待ちが普通なのだと言われていました。

現在時刻は10時半。確かに、このエリアを出て今から飲食店に入るのは厳しそうです。

『じゃあ、今何か食べちゃった方がいいかもね』と私は返信します。

『焼きそばくらいしかないけどいい?』

タロウからの質問に、それでいいと答えました。

姉一家も同様のやり取りをしていました。

 

タロウと姉達がトレイに飲み物とフードを載せて戻って来たのは、やはり30分後くらいでした。

 

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お礼を言ってトレイを受け取ると、緑色のパンみたいな物体が載っています。ヨッシーをイメージした商品なのでしょう。

「えぇ~可愛い。これなぁに?」

私の問い掛けに、

「焼きそばだよ」

とタロウが簡潔に答えます。

「え、これが?」

 

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齧ると確かに、中に焼きそばが入っています。チーズもビッシリ入っていてとてもボリュームがありました。

「美味し~い」

「まぁ。それ一個で800円もしたけどね」

「マジか」

タロウの言葉に少しだけ現実世界に引き戻されましたが、ここでしか味わえないスナックを楽しみながら食べました。

 

そしてここで食べたこの焼きそばが、今日唯一のランチとなったのです。

飲食店に入るのは難しいかもしれない、とのタロウの読みはその通りとなり、レストランはおろか飲食物の売店ですらも長蛇の列となっていたのです。

 

「とりあえず、お昼に一応は座って食べられて良かったよ」

「ホントだね~」

姉と言い合い、スーパーニンテンドーワールドを後にしたのでした。

 

 

次は、姉とMちゃん母娘が行きたがっていたハリーポッターエリアに向かいます。

タロウは自分のやりたい事をやり尽くしたらしく、

「俺は、魔法は使えないから」

と静観する姿勢を見せ、皆から笑われていました。

そうしてハリーポッターエリアに入ります。

「おぉ~すごい!」

正直私も、ハリーポッターは最初の何作かしか観た事がない上にさほどの思い入れもなかったのですが、それでもその世界観に圧倒されました。

 

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建物の雰囲気もあり、映画の世界に入り込んだ気分です。

「えっと…。確かこのエリアでは魔法の杖が売られてるんじゃなかったかな?」

タロウがマップを見ながら確認します。

「ショップはあっちみたい」

RPGゲームのキャラクター達のように、皆でタロウの後に付いて行きます。

 

魔法の杖は、ニンテンドーワールドのパワーバンドのように売店で気軽に買える雰囲気ではありませんでした。

杖の売人が、

「魔法使いが杖を選ぶのではありません。杖が魔法使いを選ぶのです。あなたに合った、あなただけの杖がきっと見付かります」

と仰々しく語り、そしてショップの中へと誘われます。

ショップ内に積み上げられた魔法の杖の種類と数の多さに圧倒されます。

「え、え? 何がどう違うの? てか、作中でもこんなに種類があったの?」

戸惑う私を他所に、はしゃぐMちゃんと姉達。

私とタロウは邪魔にならないよう、

「外に出ておくね~」

と声を掛けて混雑しているショップから出ることにしました。

「すごかったね…」

私が言うと、

「うん。何がすごいって、あそこにあった杖、全部一律5,500円だったよ」

「高っ」

「それを、このエリアのそこかしこの人達が当たり前のように持っている」

見渡すと、確かに殆どの人達がその魔法の杖を持ち歩いていたのでした。

「これぞテーマパークマジック…」

 

お待たせ、とやって来たMちゃんはハーマイオニーの杖を、Sくんはスネーク先生の杖を買って来たのだと嬉しそうに言いました。

杖には、魔法の使える箇所の地図が添付されていました。

ハリポタエリアでは、魔法の杖を購入すると、エリア内の複数箇所で魔法が体験出来るのです。

「え~?これ、どこをどうやって見るの? まず現在地が分かんない」

戸惑う従兄妹達に、

「貸して」

とマップを受け取ったタロウが、「ああ」と頷き、

「一番近いのはあっちだよ」

と先導していきました。

 

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複数箇所で杖の魔法を体感したMちゃんとSくんは、

「魔法はもういいや」

と満足した様子でした。

 

「じゃあ、何かアトラクションにでも乗る? このエリアの中だと…」

とタロウがその場で調べます。

「あの建物が人気みたい」

と魔法学校の建物を指差します。

「うん、乗りたい乗りたい」

とMちゃんがはしゃぐので、それに乗ることにしました。

「100分待ちだって。大丈夫かな。待てる?」

タロウが聞くと、

「大丈夫だよ」

Mちゃんが答えたので、私達もそれに乗ることにします。 

念の為、事前に皆でトイレを済ませて『フォービドゥンジャーニー』の列に並びました。

 

「ところでさぁ」

タロウが言ってきます。

ハリーポッターってどんな話なの? ハリーさんとポッターさんがコンビ組んで何かする話?」

「何だそのお笑い芸人みたいな設定は? ハリーポッターは一人の少年の名前。魔法世界の主人公だよ」

「ふぅん」

興味ないにも程があるでしょ、と私の突っ込みに、姉一家ばかりか前を並ぶ見知らぬ家族連れまでもが声を上げて笑っていました。

 

 

待ち時間はやはりとても長かったです。

ですが、

「ねぇ、皆でしりとりしようよ!」

とMちゃんが言い出したことで、仲良くしりとりをして過ごす事になりました。

マイペースなタロウが面倒臭がるかと思いましたが、ゲームやスマホを出す気配もなく、楽しげにしりとりに参加しています。

何だか私にはそれがとても新鮮に感じられました。これまで、こういった空き時間に家族皆で何かをして過ごすという事はなかったからかもしれません。

私は読書をし、タロウはゲームをしてそれぞれの時間を潰していました。

長い待ち時間も、皆で何かをして過ごせば楽しい時間へと変貌する。無邪気なMちゃんの提案に、心から感謝したのでした。