シフトアップのその先へ

最高の相棒と、どんな道も、どこまでも

持ち寄りパーティー~箱根林道ツーリング 後編

こじかさーん、さっきは大丈夫だった?」

休憩のためバイクを停めてすぐ、降車したKさんが聞いてきてくれました。

「バイク、どこも歪んでない? どこか打たなかった」

「はい、大丈夫みたいです。ありがとうございます」

Kさんには全く非のない事にも関わらず、何度も謝って下さいました。

先程、後続の人とはぐれてKさんがUターンしようとした際、続く私がタイヤを取られて転倒してしまったのです。スピードも出ていなかった上に、柔らかい土の上にパタンと倒れたので、バイクにも私にもほとんどダメージはありませんでした。

こじかさん、丸太越えにでも挑戦したのかと思いましたよ~」

後ろを走っていた人がそう言ったので、笑いが起こりました。私も吹き出します。

倒れた際に方向転換してしまい、車体の先に丸太が転がっていたのです。その瞬間だけを見れば確かに、丸太越えに挑戦しようとして失敗したように見えます。

 

 

ここでお昼休憩を取ることとなりました。各々が持ってきた荷物を下ろします。

丘を上がっていくと、『友逢の鐘』という鐘がありました。紐を引くと、ガランゴロンと広場に音が鳴り響きます。

眺めは絶景でした。

芝生にレジャーシートを敷くと、クッカーでお湯を沸かし始めます。

「はいこれ」

と、総監督が『金ちゃんヌードル』を全員に配ってくれました。静岡の定番ヌードルだそうです。

「ありがとうございます」

そして私も、持ってきた神奈川のお菓子を全員に配ってまわりました。

「これどうぞ」

と、他の方からは名店の卵サンドをいただきます。

こじかさん。サイダーとお茶、どっちがいいですか?」

そちらを見ると、驚いたことに全員分のコップと氷まで用意してありました。お礼を言って、お茶を受け取ります。

「え。皆さん、そんなに荷物を積んで走って来てたんですか?」

「あはは、まぁ、慣れてるんで」

飲み物もそうですが、氷を溶かさないように走るにはそれなりの装備が必要です。それだけの物を積んだら車体が重かったでしょうに、オフロードの揺れなどものともせずにここまで走って来ていました。

皆さんの運転技術の高さに感心してしまいます。

 

「あ~、外で食べると美味しいね」

隣のヨシさんに言いながら食べます。

「そうだねぇ」

気温は寒すぎず暑すぎず、丁度いい日です。ちょっと日差しは強いけれど、それも春の陽気で気持ち良く感じられました。

こじかさん、はいこれ。女性陣にだけ」

そう言ってフルーツサンドを手渡してくれました。

 

 

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「わぁ、ありがとうございます」

青空の下で眺めるフルーツサンドは、宝石のようにキラキラしていました。

「すごい、林道ツーリングの先で持ち寄りパーティーだね」

私が言うと、ヨシさんが笑いながら「ホントだね」と同意しました。そして「…俺だけ何も持って来てないや」と気にし始めます。

「まぁ、今回はいいんじゃない? 次回ということで」

次回があるかもしれないと考えるだけで、楽しい気分になりました。

 

 

一般道に出るまでは、砂利道と舗装路とを繰り返しながら走ります。

先導して下さっているKさんは、完全に道を覚えているのかナビなしで迷いなく進んで行きます。

『すごい、こんな複雑な経路、Kさんはよく覚えてるよね』

私が言うと、

『確かに。それだけ走り込んでるって事なんだろうね』

静岡各地の林道を走っているKさんが、静岡から離れた箱根の林道をも熟知しているという事実。

セローを買って3年。私はまだまだ経験が足りないなぁと痛感しました。

 

 

解散前、色んな方とお話ししました。

お腹を抱えて笑い合いました。

 

 

『今日、楽しかった』

帰路について私がそう呟くと、ヨシさんが『そっか、それは良かった』と言ってくれました。

今日という日を楽しいと感じられた自分自身に、どこかホッとしています。一時期は楽しむという感情そのものが欠落していたからです。

 

『私、バイクに乗ってて良かったなぁ』

バイクは不思議です。

年齢や性別、社会的な肩書きも関係なく、初めての人達ともすぐに打ち解けられます。

バイクのメンテナンス方法、面白いルート、過去にやってしまった失敗談など、話題は尽きる事がありません。

 

そうして出来た繋がりがまた一つ、生きていく糧となるのです。

『これからも楽しんでいこう』

ヨシさんの言葉に、

『うん』

と勢いよく頷いたのでした。